ドイツ語の受動文の代替表現!Passiversatzformen。

受動態の代替表現

今回は、ドイツ語の受動文の代替表現について勉強していこう!

受動文の代替表現はB2、C1で習う最も重要なテクニックのひとつだ。ドイツ語文法に対する理解がグッと深まるので、受動態の作り方はばっちりという人も一度目を通してみてほしい。

では、見ていこう!

受動文の代替表現とは?

受動文の代替表現 Passiversatzformen

ドイツ語の助動詞を使った受動文は、意味を変えることなく受動態を使わない形(つまり能動態)に置き換えることができる。これを受動文の代替表現と呼ぶ。

なお、受動文の作り方に自身がない人はこちらの記事をどうぞ!

4つの代替表現

受動文の代替表現は、おもに以下の4つの表現を示す。
以下の例文と共に4つの表現を確認しよう!

(元文)
Das Problem kann schnell gelöst werden.

  • manを使った表現
    ⇒ Man kann das Problem schnell lösen.
  • sich lassenを使った表現
    ⇒ Das Problem lässt sich schnell lösen.
  • seinと形容詞を使った表現
    ⇒ Das Problem ist schnell lösbar.
  • seinとzu不定詞を使った表現
    ⇒ Das Problem ist schnell zu lösen.

それぞれのパターンを掘り下げて見ていこう!

manを使った表現

最初はmanを使った表現だ。
manは非人称代名詞と呼ばれ、特定の誰かを指すわけではなく、文の穴を埋めるための主語だ。

Die Tür soll immer geschlossen werden.
ドアは常に閉じられているべきです。
⇒ Man soll die Tür immer schließen. 
Der Raum darf nicht verlassen werden.
部屋を立ち去ってはいけません。
Man darf den Raum nicht verlassen.

この文では文を組み立て直した際に、der Raum(1格)がden Raum(4格)に変わっている。

sich lassenを使った表現

次にsich lassenを使った表現を見ていこう!
lassenは「~させる」という意味の動詞で、使役動詞に分類することもできる。

Das Phänomen kann nicht erklärt werden.
この現象は説明することができない。
Das Phänomen lässt sich nicht erklären.
Der Vertrag kann nicht vor dem Ende der Laufzeit gekündigt werden.
契約は継続期間が終了するまで解除することができません。
⇒ Der Vertrag lässt sich nicht vor dem Ende der Laufzeit kundigen. 

seinと形容詞を使った表現

次にseinと形容詞を使った表現を紹介しよう。このパターンは助動詞がkönnenの場合にのみ使うことができる。

まず例文で見てみよう。

Die Batterie kann ersetzt werden.
電池は入れ替えることができる。
Die Batterie ist ersetzbar.
Die Pläne können geändert werden.
計画は変更することが可能だ。
Die Pläne sind änderbar.

動詞を形容詞に置き換える

この表現は、元の動詞を可能をあらわす形容詞に置き換えて作る。
可能をあらわす形容詞は、次の3つの語尾のうちのいずれかで終わる。

-bar

-barで終わるパターン。ドイツ語の動詞の多くはこのパターンで形容詞を作る。

(例)
verwenden ⇒ verwendbar (利用可能)
erklären ⇒ erklärbar (説明可能)
verglichen ⇒ vergleichbar (比較可能)

-lich

-lichで終わるパターン。

(例)
gebrauchen ⇒ gebräuchlich (不必要な)
verdauen ⇒ verdaulich (消化できる)

-abel

-abelで終わるパターン。-ierenで終わる動詞によく見られる。

(例)
reparieren ⇒ reparabel (修理可能)
transportieren ⇒ transportabel (輸送可能)

ひとつの動詞に2つの形容詞があてはまるパターンもある。

kaufen ⇒ kauflich もしくは käuflich
ertragen ⇒ ertragbar もしくは ertäglich

また可能を意味する形容詞の多くは、語頭にin-やun-を付け加えることによって不可能を意味する形容詞に変化させることができる。

erklärbar ⇒ unerklärbar (説明不可能な)
transportabel ⇒ intransportabel (輸送不可能な)

seinとzu不定詞を使った表現

最後にseinとzu不定詞を使った表現を見ていこう。

この表現はAmtssprache(役所などで使われる言葉)としてのみ使われる。日常生活で使うとフォーマル過ぎて失礼な印象も与えかねないので気を付けよう。

この表現は元の受動文が、müssen・sollen・nicht dürfenのいずれかを含む場合のみに使われる。

müssenの意味で使う場合

Die betrieblichen Richtlinien müssen beachtet werden.
営業のガイドラインは順守されなくてはならない。
⇒ Die betrieblichen Richtlinien sind zu beachten. 

sollenの意味で使う場合

Die Aufgabe soll zuerst bearbeitet werden.
この課題は最初に取り組むべきだ。
Die Aufgabe ist zuerst zu bearbeiten.

nicht dürfenの意味で使う場合

Im Zug darf nicht geraucht werden.
電車の中ではタバコを吸ってはいけない。
Im Zug ist nicht zu rauchen.

その他の時制での代替表現

今までに習った4つの代替表現は文の時制が変わっても使うことができる。

ここでは、現在完了形、過去形、未来形のパターンをひとつずつ確認しよう。

現在完了形のパターン

まずは現在完了形の文から確認しよう。

Die Bestellung hat storniert werden können.
注文はキャンセルすることが可能でした。
Man hat die Bestellung stornieren können. (man)
Die Bestellung hat sich stornieren lassen. (sich lassen)
Diese Bestellung ist stornierbar gewesen. (seinと形容詞)
Diese Bestellung ist zu stornieren gewesen. (seinとzu不定詞)

過去形のパターン

次に過去形の文の代替表現を確認しよう。

Die Bewerbung konnte abgeschickt werden.
応募書類は配送することが出来ました。
⇒ Man konnte die Bewerbung abschicken.  (man)  
⇒ Die Bewerbung ließ sich abschicken. (sich lassen) 
⇒ Die Bewerbung war abschickbar. (seinと形容詞) 
⇒ Die Bewerbung war abzuschicken. (seinとzu不定詞) 

未来形のパターン

最後に未来形での代替表現を確認しよう。

ドイツ語では、未来形・未来完了形はwerdenを使ってあらわす。そして、未来形・未来完了形の受動態の文では、2つのwerdenを使うこととなる。ややこしくなるのでじっくりと考えながら文を書き換えよう!

Das Paket wird versendet werden können.
荷物は配送することが可能です。
⇒ Man wird das Paket versenden können. (man)   
⇒ Das Paket wird sich versenden lassen können. (sich lassen)  
⇒ Das Paket wird versendbar sein. (seinと形容詞)  
⇒ Das Paket wird zu versenden sein. (seinとzu不定詞)  
まとめ

  1. 助動詞を含む受動文は、man・sich lassen・seinと形容詞・seinとzu不定詞などを使って能動態の文に書き換えることができる。
  2. ドイツ語の動詞の多くは、-bar・-lich・-abelを語尾に付けることによって可能をあらわす形容詞に変えることができる。
  3. これらの代替表現はドイツ語の6つの時制すべてで使うことができる。未来形の受動文では、werdenを2つ使うため置き換えがややこしい。

ABOUTこの記事をかいた人

ベルリンに住むドイツ語研究が趣味のお兄さん。2009年よりベルリンに住むベルリナー、本当は名古屋出身。 通算で2年ほどドイツ語学校に通い、上級レベルにあたるドイツ語C1試験に合格済み。2年6か月の職業訓練(Ausbildung)を終えたのち、ドイツ企業で医療系ソフトウェアの開発に従事する。